脊椎腫瘍 転移

I 現在の診断名、原因

1診断名: 脊椎腫瘍

2原因: 脊椎の腫瘍によって脊髄が圧迫され疼痛・不全麻痺が生じています.

 

II 予定されている手術の名称と方法

1麻酔: 全身麻酔

2手術名: 脊椎腫瘍切除・固定術・椎弓切除術

3方 法: 背部の後方を縦に切開します.脊椎の後方(椎弓)および腫瘍の一部を切除し脊髄の圧迫を除きます.切除部位の頭尾側の脊椎に金属性の内固定具を設置して,脊椎の安定化を図ります.

 

III 手術に伴い期待される効果と限界

1効果: 局所の治療および疼痛・不全麻痺の進行防止または軽減されることが期待されます.

2限界: 局所の再発・他の部位への転移の可能性もあります.手術自体が危険を伴います.原疾患がある場合には、原疾患そのものの治療とはなりません。

 

IV 手術を受けない場合に予測される病状の推移と可能な他の治療法

1 予測される病状の推移: 疼痛・骨破壊・不全麻痺(しびれ,運動障害,歩行障害, 排尿障害)が進行する可能性が高いと思われます.

2 可能な他の治療法:放射線療法・化学療法があります.

 

V 予測される合併症とその危険性

1 麻酔に伴う合併症: 稀ではありますが,悪性高熱,肺炎,気管の腫脹,血圧低下など死亡するような合併症を生じます(1%未満).

2 手術によって脊柱のみではなく周囲の筋・靱帯等も切除されます. そのための疼痛・運動制限・日常生活の制限がおこりえます.

3 手術によって脊髄を障害する可能性があり,麻痺の悪化もありえます.最悪 の場合歩行不能・排尿排便障害となる危険性があります(数%).

3 感染症: 手術では最大限清潔な操作を行っておりますが,感染の危険はゼロではありません(約1%).感染のため内固定具を抜去する必要が生じることがあります. すると脊椎の安定性が失われ,きわめて困難な問題が生じます.

4 深部静脈血栓症 エコノミークラス症候群: 術後に足の静脈内で血が固まり詰まることがあります.この場合は足がむくむだけでなく血の固まりが心臓や肺など  にとぶ可能性があります.心臓や肺などの血管が詰まると命にかかわります(1%未満).定期的に検査を行ってこの徴候が見られたら固まりを溶かすような点滴を行います.

5 輸血に伴う合併症: 手術中あるいは手術後に必要になった場合,輸血する可能性があります.その場合輸血による副作用が出現する可能性があります.

6 その他: 胸腔チューブを行うことがあります.硬膜外血腫(約1%),脊髄液漏出,術中の体位(腹臥位)による皮膚圧迫(顔面,眼球,胸部,骨盤部など)・大腿皮神経麻痺(大腿前面のしびれ感),長期的に硬膜周囲の瘢痕,硬膜内の神経癒着,椎弓切除による脊椎の不安定性,金属の破綻及び折損など.

 

VI 予測できない偶発症の可能性とそれに対する対応策

偶発的な合併症が出現する危険性もありますが,これらに対しては適宜病状を説明した上で治療に努めます.